舞台はなまもの

前述の大物演歌歌手がまだ大物の一歩手前ぐらいの時、どこの小屋（ホール）だったか忘れましたが、こんなことがありました。

ツアーですから、毎日同じことの繰り返しでして、その日もいつもと同じように10分前に1ベルを慣らしました。このツアーでは本ベル終わりで、荒海の効果音、すぐにイントロ、そして看板板付きで緞帳と段取りが決まっています。ステージは私の担当なのでベルや緞帳操作は私が。

1ベル終わって看板（大物歌手本人）、司会者がステージへ、「では本ベルいきます」ベルが鳴り照明さんが客電（客席の照明）をフェードアウトします。波の効果音が始まりました。続いてイントロが流れ出します。しかし、その日は客電が落ちません。イントロが始まっているので緞帳のタイミングは決まっています。あれれ、と思っているとインカム（連絡用のヘッドセット）の向こうで何か怒鳴っているんです。「緞帳待て！」しかし、もうすぐ歌が始まろうしていますので、緞帳を開けないわけにはいきません。

仕方なく、緞帳をアップしました。客電は明るいは舞台の照明は点かないは。照明室では慌てている様子。

実は照明の電源が本番直前に落ちたらしく、なんとか復旧させようと必死になっていたのです。私は持ち場を離れられないので、見守るしかありません。一曲目が終わる頃には全て照明が点き、なんとかコンサートを続けることができました。

これはいちばんびっくりした出来事でした。

さて、大物演歌歌手とは一体だれでしょう？なんて、クイズじゃありませんので、考えないでください。